死の教徒、「スケンドル」 SF小説 : 著 岩倉義人

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6 結びとして

 彼が日記の最後で言い表そうとしたのは一体何のことだろうか。
 以下は私の推測に過ぎない。
 まず第一の疑問はなぜカリフはサレクスの処刑を延々と引き伸ばしていたのだろうかということだ。それは、ヨーカラインダーと同じ理由ではなかったのだろうか。その動機は全く正反対かもしれないが。ヨーカラインダーはサレクスへの愛情から彼女のお腹の子供を受け継ごうとした。
 一方、カリフは自分のためにヨーカラインダーの計画を必要としたのだ。彼は多分、最初は計画について全く知らなかったのだろう、しかし、ヨーカラインダーのことを結局は支持したのだ。これは全く奇妙なことだ。
 しかし、この謎を解く鍵はヨーカラインダーの日記の最後にある。
 要するに、カリフはスケンドル教徒が光量子の炉の中に投げ込まれるのを必要としていたのだ。彼の力を維持するために。スケンドルはそのための栄養だったのだ。闇を食らう光。または死を食らう生。このことはそれを指している。
 カリフはスケンドルを食らう一方で、彼らが急速に数を減らしていることを危惧したのだ。かれはスケンドルを人工的に宗教を取り除いた形で、また、危険性を取り除いた形で培養しようと考えたのではないだろうか。
 そして、それこそがカリフ自身が現在、存在していない理由なのだと私は推測する。だから、ヨーカラインダーがスケンドル教徒になって帰還してから数年たった後に、彼が最高神官の座から突然下ろされたのだ。
 そして、それを悔やんだのかカリフは数年後に自殺している。
 彼は結局政敵に敗れたのだ。彼の恐ろしい生命操作を嫌う連中に。
 そのせいで彼は非常に活躍した最高神官であるのにもかかわらず、聖人として祭られることはなかったのだ。
 彼の力の没落はヨーカラインダーが姿を消した後に、即座に彼の取り巻きによって彼の大事にしていたクーネミュール学が禁止されたときに始まったのは明らかだろう。

しかし、唯一確実に確認できるのはヨーカラインダーが自分自身が死の力に犯された犯罪生物になり、始まったばかりのクーネミュール学を破滅させたということだけだ。

そして、今、十年の時を得てヨーカラインダーが処刑され、クーネミュール学が復興する。この意味は深い。先に行われた講演でミセクレイト・ダラッキが言っていたように「犯罪的生物への研究の有用性を神が認めたのだ。」とする意見はあまりに視野狭窄的だ。
 これは現在の最高神官たちがカリフと同じ道を進もうとしているのを示していると考えるのは私だけだろうか。
 私には分からない、彼らが本当は何を望んでいるのかが。

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