エテルキフ SF小説 : 著 岩倉義人

>前の章 >次の章 >エテルキフの目次へ >homeへ

35章

 コメールオル湿原が見渡せるようになる、最後の干からびた土の丘をへラムスは越えた。
 しかし、前見た景色とはどこか印象が違った。冬の大きな嵐の季節を越えたばかりなのだろうか、着色されたような緑色のアシは枯れ果てて、奇妙な茶色い苦しみに満ちたうねりをどこまでも積み重ねていた。イソギ鳥たちの来る気候の安定した夏の季節は、まだずいぶん後にやってくるのだろう。

 ヘラムスは毒の湿原に近付くと、以前来たときに書いておいた地図がまるで役に立ちそうもないことに気付いた。始終氾濫ばかり起こるここでは、小さな島などすぐに飲み込まれてかき消されてしまうのだった。
 彼は心の内では前にイソギ鳥を見た島に向かうのが良いだろうと思っていたが、ただ毒の沼の中をやみくもに進むしかなさそうだった。
 今度は頑丈な防水ブーツを履いていたから、毒の水に苦しめられることはなかった。だが、恐ろしく狂暴な雹(ひょう)に傷付けられ、押さえ付けられて腐った、アシの葉の酢えた臭気が辺りを覆っていた。
 ほとんど意味がない事を知りながらヘラムスは布の切れ端で鼻と口を塞いだ。しかし、そのような吐き気も彼には懐かしいように思えた。彼はテントの張れるような島が見付かることを祈りながら、日が暮れるまで歩き続けた。まだ、鳥たちの渡ってくるまでには間があるので、ほとんど生き物の姿を見付ける事も出来なかった。
 ただ、一匹の銀色の痩せた蛇が焦って夏眠から起きてしまったのだろうか、ゆっくりと這うのを見た。と言ってもすぐに枯れてべとべとになった草の間にその姿を隠してしまったのだが。

 日暮れになると急に気温が落ち始めたので、彼は島を探すのを諦めて、もと来た土のある所まで急いで引き返すことにした。しかし、方位磁針を見ても、過去の遺物である金属が何か大量に埋まっているらしく、全く方向が定まらなくなってしまった。また日が登るまでは彼は土を踏みしめて眠ることは出来そうもなかった。
 仕方無しに、彼は魔化学的な加工を自分で施した防水コートにくるまると、出来るだけ毒の水の少ないところに腰を下ろし、朝を待つことにした。「確かにここでこんな事をしていても何も見付かることもなさそうだな。」彼は闇の中に一人で文句を言って気を紛らわしていた。
「ここのみが私を受け入れてくれる場所だと本当に言えるのだろうか?」
 翌日になってほんの少しのビスケットを口に運んでから、朝の霧の中を進んで行くと、奇妙なことに地面が凍り付いている場所にたどり着いた。
 何か珍しい魔工機械でも埋まっているのかもしれないと、ヘラムスは思いテント用のスコップで少し掘り進んでみようとした。しかし、余りに固く凍り付いていたので手がすぐに痺れてしまい諦めてしまった。彼はとりあえずここでテントを張って眠ることにした。そして、真夜中に金属的な鳴き声が微かにしたのを彼は夢の中で聞いた。

 イソギ鳥の初めの群が雲の彼方の上よりその声を降らせてきたのだった。
 次の日、彼は霧の中に立っていると、靴の底に地面の湿り気を感じた。針のように凍り付いた緑色の霜柱がまだ所々残っていて、地中に隠された魔工機械の力を表していた。それは洪水が起こり建物が埋められた時に誤って機械が作動してしまったのだろう、数百年前の住民の死体がまだそのすぐそばに冷凍保存されている可能性もあった。もしそうであるなら、ヘラムスはその死体をどうしても見てみたいと考えた。

 しかし、地面は余りに固く凍り付いていたから、そこまで掘り進む気力は今の自分にはないことにヘラムスは気付いた。だけど、その氷づけにされている死体は、ツェリト・クファルマイヤーの死体と同じ様に彼にデル・サカルナサスを通じての接触を許すかもしれないと彼は思った。

 彼は徐々に空間被膜を最大限まで稀薄なものにして他の物質への浸透率を上げ、凍りついた土の中に意識を浸透させていった。その薄暗がりは彼に恐怖のみではなく暖かさを感じさせた。しばらくしてその土の恐ろしく深いところに、かつて生きていた人の血液を感じた。その中にサカルナサスを含んでいたからだった。しかし、へラムスはその血液の持ち主は自分と違ってそのサカルナサスの毒性によって命を落としたことを知った。
 その痙攣して悶え苦しんで死んでいく様子は、ヘラムスたちのグレナコーンド麻痺症による死の感覚とそっくりだった。その麻痺症はデル・サカルナサスの欠乏によってもたらせるものだったから、どの時点かで、彼らの中で生に向かうものと死へと向かうものとの価値の逆転が起こったのだろうということをヘラムスは幻覚の中で確信した。
 彼は自分自身が死に依存して生をかろうじて作り上げている、無神経な死に捧げられている偽りでしかないシステムであることを知ったのだった。
 その地中深くに今でも眠っているはずの過去の自分たちの血と同じ様に、自分自身のデル・サカルナサスだけで汚された血を大地にぶちまけて、自分をコントロールし続けてきた神とやらのもとに突き返してやることのみが自分に残された、たった一つの事であることをヘラムス・ストイカストルは感じ取った。

 だから、彼はそこで死ぬことを決心したのだ。
 灰色に凍り付いた大地に自分の赤い血液で着色されている様子を現実にすでに見るような気分で想像していた。その感覚はデル・サカルナサスがセミ・トリノフェタとツェリトを殺すことを命令してきたときの感じにそっくりだった。彼は自分たちの民族の内無意味で有害な者を排除する選ばれたものとしての力を身に付けたのだと思っていたが、それは間違いだったことに彼は初めて気付いた。
 しかし、もうすでにどのような事も彼の関心を引くことはなかったので、彼は自分の体の中の物質性に従って、それが無理やり見せられている夢である、生命現象を投影する映写機のレンズの目を叩き割ることを決めた。
 だから、まず腰に付けた鞘からナイフをそっと抜き取ると自分の両目を、目蓋を閉じることもなく、見えている世界の中心部分に突き立てていった。
 彼は両目を失明してしまったので、シャツの間に指を滑らせていって自分の肋骨の数を数えていった。丁度5本目の上から突き立てたならば、自分の心臓の中に最もよくナイフが届くだろう。
「その心臓が止まるまでの間、僕の右手は、その弱まっていく鼓動を最後まで感じ続けることが出来るだろうか?」とヘラムスは痛みのための夢うつつの中で思った。それが彼にとって、思考するということそのものの最後の断片であることには彼はもう気付けるはずはなかった。
 それは、彼の回りに丁度ツェリトと同じ様な空間被膜が形作られ、彼の捨てたはずの時間が止められていったからだった。

 その中で彼はもう目を失っているはずなのに、ある風景を見た。
 目を切り裂いたことの苦痛はすっかり忘れ去られていた。
 そこは白く塗られた小さな部屋の中だった。自分がセミ・トリノフェタの部屋に仕組んだ鍵穴から覗いたときの幻覚にそっくりだとへラムスは思った。
「ということは中に倒れるはずの死体は今度は僕という訳か。だけど、もうトリノフェタやツェリトの様に僕は自分で死ぬことすら出来なくなったんだ。
 奴らの事を無意味な腰抜けだとばかり思っていたけど、自分だって同じ様なものだったんだな。僕はここで僕が今までしてきたことと同じ事をしてくれる狩人を待つ他は無い。
ここは無意味な生命性の永遠の罠の中だろう。」

 ヘラムスは目をしばたいて、視覚の焦点をしっかり合わせると、彼の立つすぐ近くのソファーの上に倒れていた人が、自分でもツェリトでもない事に気付いた。彼はその人に近付くとそっと、うずめられた頭の柔らかい髪の毛を撫でた。するとやっと目を覚ましたのだろうか。その男は背伸びをしてから、ソファーに座り直した。どこかで彼の事を知り、ずっと親しげに後を追っていた事があったはずなのに忘れてしまって、一体誰なんだろうか? と、ヘラムスは思った。

 その事を彼は分かったのだろうか、その男は軽く決心をするようにして頷くと、初めて口を開いた。
「私の名前はロジア・エテルキフだ。忘れてしまったのか? 
 君はグリセル・ゴトルヒンだろ?」
 ヘラムスは驚いてその場に縛り付けられたかのように無反応だったが、やがて答えた。
「その名前は本当の名前ではない。少し前までは自分の唯一の名前だと信じていたんだが、今はもう捨てたんだ。今はただの不法移民の息子の、ヘラムス・ストイカストルなんだ。」
「ヘラムス・ストイカストル」ゆっくりロジアはその名前を反芻していた。
「君はなぜ、私がこの様にして君と話すことが出来るのか、君は疑間に感じないのかい?」
「そうだね、ロジアさん。ぜひ教えて欲しいな。」
 ロジアは彼が親しげに話し始めたので安心した。
「デル・サカルナサスを用いて作った疑似的な神性神経を使ってアンテナを作ったのさ。
君がツェリトのことを知ったのと同じ方法だ。神性意識の濃度を極端にまで薄めて範囲を広げて、相手が返答するのを待つのがこつなんだろ?」

 ヘラムスはこの男が自分自身よりも彼の事を知っているのに気付いて、威圧されていた。
しかし、自分が初めて間い掛けることの出来る相手を得たことにもヘラムスは気が付いた。
「あなたは僕のことをどう思いますか?」
 ヘラムスは、ロジアが真剣そうな表情を作り、考えるのを待っていた。
「君の事については余り良くは分からない。ただし君らを形作っているシステムの事はすごく興味深いと思っているよ。だけど、まず、君がなぜトリノフェタとツェリトを殺したのかその理由を聞かせて欲しいな。」
 ヘラムスはロジアの思ったよりも早く返事をした。
「彼らがそれを望んだからです。彼らは自殺を望みサカルナサスの作る罠にはまっていった。それを取り去って彼らを有るベき姿にするのが僕の役割だったんだ。でも、厳密に言うとトリノフェタは自殺を望んでいたとは言えないかもしれない。しかし、奴の精神は既に死んでいるのも同然だったから同じ様なものですよ。」
 ロジアがそれを聞いても眉をぴくりとも動かさないのを見てへラムスは不愉快に感じた。
「なるほど、死んでいるのも同然のものには、死を与えるのが適当だと君は言いたいんだね? だから、さっき君も死のうとしていたのか。」
 ヘラムスはロジアの顔を睨み付けていたが、何も言うことはなかった。
「君の両目はすでに自分自身で切り付けて、視力を失っているのに君は私のことだけはまだ見ることが出来るみたいだ。でも、傷口は別に閉じられている訳じゃないんだ。だから、私には君の目の黒目に開けられている二つの割れ目がはっきり見える。君ほその割れ目を通して、自由とか呼ばれている馬鹿らしい幻想を手に入れようとしたんだろ? でも確かにそうだ、君にとってはその方が良く世界を見渡す事が出来るのは間違いないことか。」
「僕は別にそんなもののために、目を切り裂いた訳じゃない。ただ、デル・サカルナサスの持つ僕を支配しようとする力から逃れたかったんだ。」
 ヘラムスは気分を落ち着けようとして、何度か深呼吸を繰り返した。それが幻の中の、意味をなさない呼吸である事を忘れていた。
「だけど、僕がしたことが全く無意味なことだったとしても、仕方がないことだと僕は思っています。」
 彼はロジアの目が青く静かに光り続けているのを見た。その惑星に似た、暗がりに包まれている様子を見るうちに、この男はヘラムスの事を殺すことが出来得る特別な銃を、上着の下に隠し持っていることに気付いた。デル・サカルナサスを弾の先に仕込んだ銃だ。

 それがどのような機構で出来上がっているかへラムスには全く分からなかったが、彼が自分の思うままにヘラムスの事を操ることが出来ないと知ったら、すぐにその銃を抜いて、心臓に打ち込んで来ることは間違いないことだった。だから、ヘラムスはそれを知って、すぐにでも自分の心臓をえぐり出して、ロジアにくれてやりたい様な気分になったが、もうしばらく辛抱強く待ちさえすれば、自分は確実にその弾丸を心臓の中に受け止めて、望むようになるとも思えたのだった。

 しかし、またロジアは静かに話し始めた。
「だから、君は死ぬことを望むという訳か。でもそれは君が一番恐れている、デル・サカルナサスに、全てを支配されることそのものだと、私は考えるがね。」
「それなら、あなたは僕にまだ生きろなどと言うつもりですか? 僕はただ、あなたの隠し持っている、その殺人装置で僕の無意味な心臓を切り刻んで欲しいだけなんです。あなたはそのために僕に会いに来てくれたんですよね?」
 ロジアは一度ごくりと唾を飲み込んだ。へラムスはその喉の動きをじっと見詰めた。
「確かにそうだ。僕は君を殺しに来たんだ。ツェリトが君に望んだようにね。だけど、その気はもう無くなったよ。君のことを殺してもそれこそ僕にはどうにもならないことだ。
君の空間膜を解くのをツェリトの時と同じ様に、手伝ってやるから、もう一度ジスに戻ってこないか? それとも、君と同じ様に君が空間膜から抜け出そうとしている時に、僕が君の自殺を誘発する罠でも仕掛けて君の事を侮辱するとでも思っているのかい?」
 しかし、ヘラムスは平然と言い放った。
「そんなことはお断りします。僕は彼女みたいに何かに頼りたくはないんだ。」
 ロジアはそれを見て少し笑った。
「君はまだ、ツェリトが自分自身以外の何かに頼っていたとなんて考えていたのか。確かに最後のナイフでの一突きは彼女には本当は必要の無いものだったが、それ以外に彼女は自分から何かに依存していたことなど、ただの一度も無かったと確信しているがね。でも、君は違うということに気付いているんだろ? 
 君は望まれてするべきことをしたと言っていたが、君は自分の中の殺人欲求と絶望に依存しているだけじゃないか、それで、あげくの果てには自殺をしようとしてツェリト仕組んだ罠と同じものの中に自らはまっているという始末だ。君は永遠にデル・サカルナサスの中に囚われて、気違い染みた不死を味わい続ければ良いと私は言ってるんだ。私には君に打ち込むことを望める弾丸なんて一発も、持ち合わせてはいない。残念だったな。」
 それを聞いても拒絶するように、へラムスは顔を背けていたが、長い時間が過ぎて、またロジアに向かって口を開いた。くちびるが二、三度痙攣していた。そして、ほとんど息を微かに押し出しながら話し始めた。
「なるほど、私は自殺することさえ満足に出来ないし、殺されることを望むことさえ許されていないという訳ですね。確かにあなたを期待することはもう諦めましたよ。だけど、もう少しだけ話を聞いてくれませんか?」
 ヘラムスは自分の中でロジアの事を殺してしまいたいという欲望が生まれたのを感じてはいたが、その事は無視することに決めた。そして、ロジアが黙って頷くのを待って、彼は話した。

「たった一つだけ自分のことを考えて行く中で分かったことがあるんです。
 世界がなぜこの様に私を苦しめ続けるのかを知ることをずっと求めていたんですが、デル・サカルナサスと話が出来るようになって、やっと分かったんです。世界そのものの有りようが私の事を苦しめるのではなく、物質が見せられている幻覚の中にのみそれが有る事に気付いたんです。むしろ、生命現象そのものの中にです。生命は無意味である外の世界を、極端に歪められたレンズを用いて、物質の中に投影する事で、意味という幻を作りだし物質に見せているんですよ。その幻が私の苦痛の大本になっていることは間違いないでしょう。言わば物質が閉じようとしている扉を、中の魅力的な夢の幻燈を見せることで騙して、そこに釘付けにしているのと同じ事なんです。
 だから、本当は私を支配し続けているようなデル・サカルナサスも本来その様な力を持ち得る必要もないはずです。その様に考えを進めていくと、私の中のサカルナサスのコントロール性というものも、私自身が望んでいるものでしかないと言わざるを得ません。私は、なぜそのような幻覚を保ち得るのか、私自身の生命構造に問いただすことだって、出来ないことはないでしょう。でも、それに気が着いても、全ては無意味な遅すぎることだったんです。
 私の中の生命構造式そのものである、開かれた神性神経の投影体、スクリーンは、私がそこを無理やりこじ開けて覗いたことで、自然に発火して燃え尽きてしまったんですよ。
だから、僕はそれに有るベき形を与えなければならないんです。」

 デル・サカルナサスによって親和性という、幻のへそのおをつなげているロジアはそれを聞いて、全て反論する気持ちが失せてしまった。彼の望むようになれば良いとでも感じたのかも知れなかったが、自分自身でももはや混乱を始めてしまい、言うべき言葉を持っていないことにロジアは気付いた。
「分かったよ。君の望むようになりさえすればいいと思う。」
 そうロジアはつぶやくと彼のデル・サカルナサス・スカルド・ナーバーを用いて作ったアンテナのスイッチをロジアは切ってしまった。

 しばらくして、もう親和性を失っているのにも関わらず、ロジアは彼が死んだ事を知った。
 ヘラムスは通常の感覚の空間に戻ると、コメールオル湿原の凍った土の上に寝転んだ。そして最初は左の手首の動脈をナイフで切り、ナイフを左手に持ち変えると右の手首も浅く切り付けた。その時はなぜかサカルナサスの被膜は生まれてはいなかった。それは、ロジアのせいなのかとも思えたが、すぐにそうではないことを確信した。へラムスはもはや見ることを拒否された目で、自分の血液がコメールオルの腐った土に浸透していくのをはっきりと見た。そして、地中深くで、数百年前に死んだ自分たちの血の凍り付いたものの中に、ヘラムスの血が混じり合って、再び凝結していくのをヘラムスは感じ取り、彼は安心して、死の中に意識を捨てた。
 ジスの神官警察の実験室の中で、数分の間だけ意識を取り戻したロジアは、彼はただ死に魅入られていたのみだったかを考えていた。しかし、ヘラムス・ストイカストルの言っていたことを思い出した。

 彼らはあの毒沼の中で、生と死の指向性を逆さまにしなければ生き残ることさえ出来なかったのだろうとロジアは感じた。だから、彼は生きようとすればするほど、殺人という犯罪を必要としたのではないかと夢うつつの中で思った。しかし、その興味もスカルド・ナーバーを使った後の虚脱感に綺麗に吸い取られてしまったので彼はしばらくそれを忘れて眠りにつかねばならなかった。今度ばかりはロジア・エテルキフはその麻痺に似た眠りを進んで受け入れようとしていた。

 ロジアは彼のデル・サカルナサスの幻のアンテナが、湿原にいたヘラムスの意識に親和性を持ったときに、すぐに躊躇せず彼を自分で打ち殺してしまった方がよほど良かったのではないかとも思えた。だが、ヘラムスは最後に自殺することが出来たらしかった。それは侮恨によるものでは確実になかったが、必要のない美化に惑わされた死以外のものだって、その中にあったに違いないと、ロジアは感じた。

>前の章 >次の章 >エテルキフの目次へ >homeへ
レザラクスhomeへ
Copyright (C)2004-2018 Yoshito Iwakura
http://lezarakus.nobody.jp/
このサイトはリンクフリーです
相互リンクサイト募集中
et_img