エテルキフ SF小説 : 著 岩倉義人

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3章

 「神性意識・神性感情とかいうものに、なぜ、「神」という冠詞が付くのか、考えてみなよ。それは、特定の目的というものを持たないからだ。全てが同価値だからこそ、神と呼ばれる資格を持つんだ。しかし、彼らが食らうものは、人間の感情と周りの空間だけだ、神は常に内向きに閉じこもろうとする性質を持っている。そのことが今回の事件の不可能性について、関係がある気がしてならないのだが。
 レン・スコットヘ。
 ロジア・エテルキフ
 11月3日。」

 ロジアがセミ・トリノフェタの塔に初めて登ってから、すでに3週間が過ぎていた。スコットが今日は捜査室に帰らないのを知っていたから、書き置きをして彼は帰ろうとしていた。正方形に近い窓から地上を見ると、街路樹の上の紫外線灯が消えた。最も効率的に材木を生産しているのだったが、その青いライトを見ると、自分の中の血液が脱臭されていくのを、ロジアはいつも感じた。
 トリノフェタを内側に抱きつつ、どうして銀の鍵の神性神経はその目を内側に閉じたのか? もしかすると、あれはダミーでもう一つ内側に鍵があるのか? そんなはずはないはずだ。封印紋はある限定された空間を、孤立化させるものなのだから。
 ロジアは資料を取りに数回、大学の研究室に帰ったのだが、この8日間は鍵をかけたままだった。しかし、ここでしているのも同じ様なことだ。私は私の匂いを消し去ろうとしているものについて知りたいだけなのだろう。
 ロジアは家に持ち帰ろうとしていたファイルをもう一度開けた。
 要するにこういうことか。仮に本当に、トリノフェタの心理反応式を使っていたとすれば、トリノフェタが死んでいる今では、自然と、鍵が開いているはずだ。鍵穴から光学生体感知機ですでに調べたのだから。
 しかし、トリノフェタの亡霊の心理反応式が使われているのも間違いないことだ。
 つまり、あの鍵たちは二重の夢を見させられている。一つは鍵を掛けた主がいまだ、生きているという。もう一つはその亡霊が扉の中ではなく外側にただよっているという夢だ。犯人は死神か? この鍵を開けるには、この私も偽りの神の真似をするしかないのだろうか? 

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