詩集:著 岩倉義人

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石の中に浮かぶ月

手を差し伸べて枯れ葉をとり
新しい月を土の中に探す

未来にはかつて
二つの月があった
真っ赤な明るい月と
緑に沈む月とが

その人は緑の月を抱きしめて
こう言った
「この中にはそう、あなたがいます」と
赤い月はそれをみて激怒し
すべてを忘れるためだけに
新しい恋人を作った

土の中には今も石の月が眠っていて
明け方にヨタカが鳴くのをまっている
その声を聞いて蘇るために

地面の上に吐き出された種を数えて
それをはいた人を呪う

そういう小さいことだけが
僕のことを安心させた

新しいビルディングに掲げられた
新しい月たち

それを目がけてダイブする
ミジンコクラスの太陽たちが
一斉に自分の無罪を主張していた

石の海の中を潜って行く
潜水艦のふりをする月たち
それに乗り遅れてしまっては
後に残された子供たちに
殴り殺されてしまうだろう

流される鼻血の一滴目は
大地に眠るアンデスの神に捧げられ
口から流される一滴目は
食べられずに投げ出されたトマトみたいな
あの子に捧げられるのだろう

全く感謝されない犠牲のために
死んでいくのはごめんだ

むしろ潜水艦に乗って
溶岩の中にでも
隠れてしまう方がましだろう

そこにはたくさんの月がまっていて
僕の体を抱擁し
きれいに押しつぶしてしまうのだろう

そうやって搾り取られた血液は
レモンジュースみたいに飲み干されるのだろう
乙女みたいな神々たちによって

そうやって地面に落ちた葉っぱを取り除き
恥ずかしい地面を露出させて
そんなふうに静かになでていても
月はやっぱり戻ってこないよ

だって月は地面の中でかつていた
もう一人の自分に出会い
それに衝突して破裂してしまったんだから

風船みたいにはじけ飛んでしまったんだ

月の皮は今でも地球の溶岩の湯船の中に
ふわふわ静かに浮かんでる

それ見るためには
地面の中に坑道を掘り
ミミズみたいに駆け巡り
赤い血を流すしか
しかたないんだ

アダム・ニル
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