詩集:著 岩倉義人

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桃色の部屋

手を伸ばし、そして触れていた
丸くなっていく、
真っ赤な瞳たちのための花びら

手のひらの上にはほら、
永遠という名に
凍りついてしまった
衛兵たちの足跡

まずくて吐き出された
あの人の種は
今頃どこかの地面の上で
熱い最後を迎えているのだろう

無制限に続く、衛兵たちのステップ
その隙間にかすかに生き残っている
花びらたちのかけら

桃色のペンキに塗り固められた部屋
桃色の机の上には
ガラスの指輪が置かれていて
指輪はもとの持ち主の指を
どうしようもなく、
求めている

あの時見つめている目をとざした指、
その指を求めている

桃色の部屋には
果汁たっぷりの桃の実は似合わない

実からくりぬかれた後の
種だけが、
ただ静かに生まれている

机の上で産まれた種
それはもともと果肉の中に
包まれてはいなかった

にせもののやさしさ
そんなものに包まれないで
すんだのは
幸運だった

銀色のナイフがひとりでに
すべてに裂け目をつけている

空間の流す血は青かった

まるで青空のようだった

僕はその青さを知り、
後悔に縛り付けられ
机の上の桃の種を
奥歯の間に挟み込み
種を砕いて
殺した

種から生まれるはずだった、
小さな未来を、
唾液といっしょにはきだした

それでも部屋は桃色のまま

ミサイルの中のようにあたたかだった
あの人の中のにおいも感じられた

花びらに包まれている真っ赤な瞳たちへ

桃色の部屋
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