詩集:著 岩倉義人

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「白銀虫と毒薬」

白銀虫のセリフ

「ひっひっ、チッチッ、イッイッイー」
「なんだか舌が回らなくなってきたみたいだ。
 たぶんオリ男に毒でも盛られたんだろう。」

玉 オリ男
バラバラになった柵を首にかけて、
引きずって下手から登場。

ひどくおびえている。
舞台中央にて、柵を自分の周りに組み立て、
やっと安心して座り込む。

玉 オリ男の唯一のセリフ
「オ、オレを、
 醜い、
 つぶつぶした肌をした、
 ケツの腫れ上がった、
 潰れたブドウの皮みたいに
 腐ってると言った、
 白銀虫の奴め!」

舞台、徐々に真っ暗になっていく。


「ゲスイノーグ!」

舞台中央に突然割れ目ができ、
そこから、ゲスイノーグの髪が
大量に姿を現す。

ゲスイノーグは自分の白髪をわしづかみにして、
しなびた乳房や、うなじを乱暴にぬぐった。

髪からは奇妙な銀色の埃が舞い上がっていた。
それを吸い込んだものは、
発狂して舌を出し、踊り狂うだろう。

だが、そうならない者もいた。
白銀虫は呼吸器官を持たなかったから、
関係なかったのだ。

白銀虫はゲスイノーグの近くで、
小さな"おなら"をした。
(その音にゲスイノーグは怯える。)


米 鬼幼(こめ おにおさ)の王子

にきび面の王子
しわしわの白いキノコの生えた鎧を着て、
手には鉛で出来た剣を握っている。

また、腕にはカマキリで出来た腕輪を巻いている。
もぞもぞと動く腕輪。
まだカマキリは生きている!

米 鬼幼はそれを乱暴にむしり取ると
臼歯で頭を潰して殺してから
ばりばりとかんで飲み込んだ。

それから羽根だけをプッと吐き出した
舞台の上できらきらと舞う、四枚のカマキリの羽根。

地面に着くと同時に羽根は水になって消えた。
白銀虫は急いでやってきて、
その水の中に身を浸した。
「これで熱がなくなる。」
「頭のハート型のハゲもなくなる。」
「どうしようもない馬鹿が直る。」

そのような太い男の声が林の中の暗闇の影からした。
いそいで振り返る白銀虫。
でも誰もいない

「クリクリ、クリクリ、クリクリクリクリ」
何かの機械が動く音がかすかにする
それにあわせて、米鬼幼は鉛で出来た刀を抜いて
ハリク・ハベラの花の頭をちょんぎってまわる

白銀虫は地面に落ちたハリク・ハベラの白い花弁を
集めて、それを、ゲスイノーグが悶えて眠る前に
そっと置いた。

ゲスイノーグがそのかすかな匂いに気づいて、
びくっと体を震わせると、
驚いて、白銀虫はすみっこに隠れた

ゲスイノーグ、一枚ずつしわだらけの手で花をつかむと
自分の舌の上に並べていった。

花びらは舌の上できれいに菱形に積まれている。

そのクローズアップ。

ゲスイノーグの目玉のクローズアップ
彼女の黒目はしっとりと湿っていた。
それに自分の舌の上の花びらが映る。

また、彼女の黒目には爆発炎上する
都市の姿が映し出された。

「ヒュークア・キップ・テーマンル!」
電信柱に取り付けられている、
ユリの形をした拡声器がそう繰り返し
がなり立てる。

下半身を剥き出しにして優雅なしぐさで敬礼する
米鬼幼。

彼のしなびたペニスに白銀虫は静かに巻き付く
ためいきを漏らす、米鬼幼

そっと自分の肩に生えたキノコを千切ると、
それに口づけをし、
頭上に放り投げた。

すると、空中でキノコはパチンと弾けて、
小さなシロヒトリに姿を変えてパタパタと
毒の鱗粉を降らせながら、どこかに
飛び去っていった。

シロヒトリはいまごろどこかの蛾の舘に閉じ込められて
いることだろう。

その羽ばたく音を聞いて、やっと自分のしていることに
気がついた白銀虫は、なんとも言えないぐらいの
嫌悪感を感じながら、
ただ、静かに自分の寝床の土の穴に向かって、
這いずり始めた。

町はもう夜中だ。

オリ男は自分の作ったベビーサークルの中で
降り積もる、ひよこの黄色な羽根の暑苦しさに
一人であえいでいた。

彼が眠るときはいつもすっぱだかだ。
それが黄色な羽根のあいだから、
かすかに見えかくれしていた。

白銀虫と毒薬
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