詩集:著 岩倉義人

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「ゴキブリの女兵士たち」

ゴキブリの羽根の
甲冑を着た女兵士たち

緑の乳房の間にざくろ石の指輪を挟み
ダンスを35秒間続けた

舞台中央にはタルタロッサの卵が一つ

ゴキブリの女兵士たちは
尻に生えた針で一度ずつ
その卵を刺して汚した

女兵士たちの退場

ゴキブリたちの歩いた後には、
銀の粉の足跡が残っていた

タルタロッサの卵から生まれた
美しい透明な蛆虫は
ゴキブリ兵士の
乳房の間に挟まって
夜を重ねた

タライムック!

蛆虫たちは乳房を食い破り
直接、乳を吸った

その時女はこう叫んだ

蛆虫の透明な指輪をして
踊る、女兵士たち

舞台中央に
いつの間にかできた
黒い汚らしい池の水を
野獣のように
貪り飲んだ

耳の穴から突き出された
ペニス

羽根を持つことを
許された蛆虫は
魂を五百円札と
交換し
その金で
女のための指輪を買った

からし色の血

かげろうと結婚することを
許された蛆虫は
結婚サギをし、
かげろうは
からし色の池に身を投げた

その瞬間池の上には
銀のさざなみが起こった

カタツムリの夜
巨大なカタツムリの殻の中に
順番に首を突っ込み
肉を貪り食う
ゴキブリの女兵士たち
カタツムリの体液を
アクセサリーのように
体に塗った

からっぽになった
カタツムリの殻の中に
潜り込んで眠る
蛆虫の子供たち

零下50度の寒さから
身を守るために
そこに集まっていた

ゴキブリの女兵士たちは
その周りで25秒間
ダンスを踊ると
その時に出た汗で
粘膜を作り、
カタツムリの殻の
入り口を塞いだ

ゲスイノーグ!

そう叫びながら
銀色の巨大なドリルで
女兵士たちは
カタツムリの殻に穴を開けた

そして
穴のなかに甘い毒ガスを口移しで
代わりばんこに
吹き込む女兵士たち

殻の中で静かに絶命する
蛆虫たち

最後に蛆虫たちは自分の口の中から
三匹の本当に生きている蝿を
産み出した

蝿の月

舞台上手に掲げられた安物の偽物の月
その周りを蝿で出来た雲が覆い尽くした

それに向かって大砲を撃つ
女兵士
月は水風船のようにはじけ
舞台は風船の中身の
黒い汁によって
暗転した

カラスウィック!

ゴキブリの女兵士たちは
暗闇の中で静かに
カラスウィックのダンスをした

その足音を死んだ母親に
捧げるために

劇終

ゴキブリの女兵士たち
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