詩集:著 岩倉義人

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「チョコレートの香りの小鳥」

霧中の小鳥
霧の中の鉄格子に止まる

黒い鉄の塊が
3000フィートの
海の底に沈んで行くのが見える
鉄の箱には窓が4箇所付いていた

窓からは見ることの出来ない
冷たい光が漏れていた
5000年前にされた、
接吻の化石たち
光の中には
そんなものが閉じ込められていた

ウスバカゲロウのかすかな香り
穴の開いた潜水服には
そんな香りが似合う
やさしく
そして、
あたたかい笑顔を浮かべて、
私は鉄格子に接吻した

それに驚いて、どこかに
小鳥は逃げ出してしまった

タイプライターに
チョコレートを
塗りたくって、
私の祖父は絶命していた
多分、霧の日に復活を遂げようと
たくらんでいるのだ

私は霧の門を閉ざし、
あたたかさが
逃げ出さないように
気をつけていた

だが、てのひらに
止まり続ける小鳥は
鳥ではない

鳥は窓から飛び出ようとし、
窓ガラスに頭をぶつけて、
頭蓋骨を破裂させた

鳥は朝になると、
祖父の目蓋をつついて
起こそうとした

鳥はチョコレートをいつも
ねだっていた

私はなぜ祖父がタイプライターの
キーボードにチョコを塗ったのか
やっとわかった

祖父は鳥に詩を書かせようと
していたのだ

しかし、鳥は祖父が死んだあと、
チョコを食べようとしなかった

祖父の手から食べるチョコ以外は
鳥にとって甘くなかったのだろう

私は鉄格子の上に死んだ小鳥を
引っ掛けた

それは霧の中で
黒い十字架の形をしていた

鳥はチョコレートの香りがしていた

私はそれから
ずっとチョコレートのことを
憎み続けた

霧の中で見た、私の幻は黒い白鳥と
手をつないでいた

小鳥のことは
忘れなければならなかったのだろう

チョコレートの香りの小鳥
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