詩集:著 岩倉義人

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アダム・ニル

アダム・ニルは目を見開き

角膜の中に
青空が進入するのを
許した

彼の手のひらには
その日の彼が殺した動物の
名前がペンで書かれていた

「コリダンドの木に住んでいた、
赤い毛皮をしたウサギ
彼女の祖父は
ハゲワシに
さらわれて殺された」

「泡の中に閉じ込められていた
セバスチャン・モントリオール
母親の作り出した泡の中に
彼はいた
彼は童貞の蟹だった」

「氷を一生背負い続ける
カタツムリ
彼の氷の殻が解けたとき
彼の一生は終わる
私はマッチで火をつけ
その殻を溶かして
殺した」

などと書かれていた

アダム・ニルは一日の終わりに
その字を静かに舐め取って消した

そうすることでのみ彼の空腹は満たされた

地面は血管のようにひび割れていた

ひび割れ目から
一匹の
縞だらけのミミズが
頭を覗かせていた

それをバラの棘のような口ばしをした、
鉛色の羽根の鳥がすばやくついばんで
殺した

アダム・ニルは鳥に向かって
呼びかけた

彼は足の指と手の指を交換する手術を
受けることを
鳥と約束した

彼はこの先、手の指先で歩き、
足の指でフォークとナイフを握る
ことになるだろう

彼は地面に寝転んでいた

赤い光に包まれた地面はまだ
暖かかった

アダム・ニルは星の形をした棘が
空を貫いているのを見た

その光が
彼の目の中に住んでいた
青空を
静かに
殺してしまった

「青空の羽根は幻の中に
閉じ込められている」

彼はそう、
手のひらに
ペンで書き込んだ

その字は
刺青のように
皮膚に
しみこんで
消えることは
なかった

アダム・ニル
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